作家のための音声入力ソフト:声で本を書く方法
作家が本の音声入力をあきらめた理由を語るフォーラムのスレッドを読むと、ソフトが聞き取ってくれなかったという不満はめったに出てきません。聞き取りは完璧でした。返ってきた原稿は、声に出して考えている人の忠実な記録だったのです。言いかけてはやめた書き出し、「まあとにかく」、三回言い直された一文。話すことで浮いた時間は、推敲ですべて消えました。これこそ作家向けの音声入力ソフトが解決すべき本当の問題であり、その解決策はたいてい、より良いアプリを買うことではなくワークフローにあります。
このガイドでは、声で本を書くことを実際にどう進めるかを扱います。話す前に何を準備するか、机で、あるいは散歩しながらセッションをどう進めるか、会話文や自分で作った固有名詞をどうするか、そして話し言葉の原稿を、話し言葉に聞こえなくなるまでどう推敲するか、です。
口述した原稿が文字起こしのように読める理由
話すことと書くことは別の道具です。話し言葉は直線的で寛容です。強調のために繰り返し、話を戻し、言葉だけでは伝わらない意味を声の調子に託します。書き言葉は推敲され、凝縮され、声を持ちません。口述すると、欲しいのは後者なのに手に入るのは前者で、その差がそのままページに表れます。
悪いことばかりではありません。会話文は声に出したほうが自然になることがよくあります。登場人物を組み立てるのではなく、その声を聞いているからです。ノンフィクションの書き手の中には、テーブル越しに何かを説明するときの口調のほうが、タイピングしたときの文体より温かみがあると感じる人もいます。タイピングの文体は、堅苦しく形式ばったほうへ流れがちです。これらは本物の利点で、推敲の段階でも守る価値があります。
スピードの議論は正しいのですが、聞こえるほど広くは当てはまりません。スタンフォード大学、ワシントン大学、Baidu の研究者による2016年の研究では、英語の音声入力はスマートフォンのキーボードで親指入力するよりおよそ3倍速いという結果が出ました。ただし参加者が入力したのは渡された短いフレーズで、文を自分で考え出していたわけではありません。測っているのは言葉が入力される速さであって、何を書くべきかを決める速さではないのです。
小説では、決めることこそが遅い部分です。この場面で何が起こるのか、誰が何を知っているのか、なぜ彼女は嘘をつくのか。それを知らずに座って口述を始めれば、知らないということについて大量の言葉を生み出すことになります。だからこそ、音声入力を続けている作家の多くが、ボタンを押す前に同じことをするようになるのです。
まずアウトライン、それから話す
三十ページの計画は要りません。必要なのは、マイクがオンの間に次に何が来るかを探さずに済むだけの材料を、ページに用意しておくことです。フィクションなら、たいていは場面カードです。その場面に誰がいて、何を望み、何が変わり、どう終わるかを数行で書いたものです。ノンフィクションなら、各セクションが打ち出す主張と、それを支える二つか三つの論点です。
そのまま口述できる場面カード
誰が:マーラと兄のトム。望み:彼が読む前に、彼女はその手紙を手に入れなければならない。転換:彼はもう読んでいる。退場:彼女は手紙の意味について嘘をつき、彼はそれを見逃す。
四行、書くのに三十秒。一度声に出して読み、それから話し始めます。話がそれたら、原稿ではなくカードに目をやりましょう。
アウトラインまで口述する作家もいます。部屋を歩き回りながらプロットを語り、それをカードに煮詰めるのです。これはうまくいきます。アウトラインは、とりとめなく話してもかまわない唯一の文書だからです。ただし二つの段階は分けておきましょう。物語を見つけるためにはゆるく話し、書くためにはカードに沿って話します。
ノンフィクションには便利な変化形があります。インタビューしてもらうのです。読者が聞きそうな質問を友人に投げかけてもらい、その会話を録音し、文字起こしから原稿の材料を掘り出します。たいていの人はマイクに向かってより、聞き手に向かってのほうがうまく説明できますし、質問はアウトラインが隠してしまう穴をあぶり出してくれます。
各テイクの冒頭で、その場面の目的を声に出して言うのも効果的です。「トムが真相を知る場面」。この一文はあとで消しますが、続く十分間を一つの方向に向けておいてくれます。
セッションの進め方は二通り:机で、そして立って
机で
机での口述とは、原稿に直接話しかけることです。Word や Google Docs で下書きするなら、どちらにも無料の音声入力が組み込まれています。設定方法は Microsoft Word での音声入力と Google Docs の音声入力のガイドで解説しています。Scrivener のユーザーや、複数のアプリを行き来する人は、カーソルがある場所ならどこにでも入力できる、システム全体で使えるツールを選ぶことが多いようです。ノートパソコン内蔵のマイクに頼らず、ヘッドセットかクリップ式のマイクを使いましょう。マイクからの距離は、たいていの設定よりも精度に大きく響きます。
執筆フォーラムでよく目にする不満は、間(ま)についてです。台詞の多い長編を計画していた MacRumors のある投稿者は、試した標準の音声入力が、30秒ほど黙っていると勝手にオフになったと書いていました。作家は絶えず手を止めます。考えるのはその間だからです。使っているツールが沈黙を許さないなら、オンにしたまま保てるトグル式のものを探すか、代わりに録音しましょう。
机でのコツをもう一つ。言葉が現れるのを見ないことです。ウィンドウを小さくするか、画面を暗くするか、窓の外を眺めましょう。聞き間違えられた単語が目に入ると、すぐにそれを直したくなり、直している間に、書いている途中だった場面が消えてしまいます。
立って
歩きながら話すことは、作家同士が経験を語り合うときに何度も話題にのぼります。いちばん簡単なのは録音です。歩きながらスマートフォンに向かって場面を語り、帰宅してからファイルを文字起こしします。間を置いても何も失いませんし、言葉が現れるのを見ずに済むので、それが解放感につながるという作家もいます。手順はボイスメモの文字起こしのガイドにまとめています。
もう一つは、スマートフォンの音声キーボードでメモアプリに直接口述する方法です。すぐにテキストが手に入りますが、車の音や風の影響を受けやすくなります。Laxis はどちらの方法にも対応しています。録音をアップロードして文字起こしするか、iPhone や Android のどのアプリにでも口述するかで、どちらも同じ月間の利用分数を使います。どちらを選ぶにしても、歩きながらのセッションはラフな下書きと考え、丁寧な作業は机に戻ってからにしましょう。
どのくらいの長さで、どのくらいの頻度で
最初は十五分か二十分の短いセッションから始め、そこから延ばしていきます。アイデアより先に声が疲れますし、いきなり何時間も続けて話すと、週末には喉が痛くなっているかもしれません。水を手元に置き、負担を感じたらやめましょう。たまのマラソンより決まった時間帯のほうがうまくいきます。また、各セッションをどこで行ったか(机、散歩、キッチンテーブル)を記録しておくと、どの条件で最良のページが生まれるのかがすぐに見えてきます。
会話文、句読点、そして誰も聞いたことのない名前
会話文は、多くのフィクション作家が音声入力でつまずくところです。台詞には一行ごとに引用符と話者、そしてたいていは改段落が必要で、それをすべて声に出す(「open quote, I'm not going, close quote, she said, new paragraph」、つまり「開きかっこ、私は行かない、閉じかっこ、と彼女は言った、改段落」)と、緊迫した場面が句読点の朗読会になってしまいます。
抜け道は二つあります。一つは、使っているツールが対応する音声コマンドを覚えることです(音声入力コマンドのガイドに一覧があります)。その代わり、遅くても正確な下書きを受け入れることになります。もう一つはよくある妥協策で、会話文を短いタグ付きの素の台詞として話し(「トム:読んだよ。」「マーラ:あなたが思ってるようなことじゃないの。」)、引用符や動作の描写は二回目の推敲で加えるやり方です。話すのも速く、直すのも簡単です。
名前はもう一つの難所です。主人公も、架空の町も、ファンタジーの宗教も、どの音声モデルの学習データにも入っていません。四十回目の修正のあとではなく、第一章を書く前にカスタム辞書に登録しましょう。Laxis では Personal Dictionary(個人辞書)がそれにあたり、本格的な音声入力ツールならたいてい同等の機能があります。それでも名前がうまく変換されないなら、場面の途中でエンジンと格闘するより、あとで検索・置換できる独自のプレースホルダーを使うほうが得策です。
クリーンアップが登場人物から何を消しているかに注意
フィラーの除去は、地の文ではありがたい機能ですが、会話文では危険です。緊張しているせいで登場人物が「えーと」と言ったり同じことを繰り返したりしても、フィラーを取り除き繰り返しをまとめるツールは、黙って彼女を「直して」しまいます。そうした台詞には書きながら目印をつけ(あとで検索するマーカー語を口にしておく)、推敲の段階でためらいを元に戻しましょう。
本は二回目の推敲で書かれる
口述原稿を救うルールはシンプルです。話しながら直さないこと。単語一つを直すために止まれば流れが途切れますが、その流れこそがすべてです。場面を最後まで書き上げたら、少なくとも翌日まで手をつけずに置いておきます。
戻ってきたら、紙か別の画面で、しかも声に出して読みましょう。目では読み流してしまう話し言葉の癖が耳に入ってきます。「で」や「それで」で始まる文、「なんか」「基本的に」といった積み重なったぼかし言葉、一段落に三回出てくる同じ動詞、句点を打つべきところで一度も間を置かなかったためにできた、だらだらと続く文。音読が疲れるなら、コンピューターに任せましょう。Word や Mac の読み上げ機能が章を読み返してくれますし、抑揚のない合成音声は、もう気づかなくなっていた水増しをあらわにします。
二回目の推敲チェックリスト
- まず構成:その場面は、カードに書いたとおりの役割を果たしているか?
- 前置きの咳払いを削る。テイクの最初の二文は、たいてい準備運動。
- 自分特有の口癖を検索し、そのほとんどを消す。
- だらだら続く文を、自然に息継ぎするところで切る。
- 会話文の句読点と、登場人物に残すべきためらいを元に戻す。
フォーラムで見かける不満のうち、真剣に受け止める価値があるのが、音声入力をしても「文と文をつなぎ合わせる作業」が残る、というものです。そのとおりですが、それは失敗ではなく仕事そのものです。タイピングした原稿にも同じ推敲が必要で、ただ継ぎ目がうまく隠れているだけです。声が変えるのは比率です。より多くの素材が、より早く手に入り、その分ページあたりの推敲は増えます。
AI による手直しについて、一つ注意があります。音声入力ツールの中には、あなたの言葉を自動的になめらかな文章に書き換えられるものがあります。メールならそれは便利です。しかしフィクションに必要なのは、ゴーストライターではなく編集者です。フィラーを取り除き、句読点を加えても、文そのものには手をつけない存在です。ツールに書き換えモードがあるなら、原稿の作業ではオフにしておき、デモ用のメールではなく、地の文一ページで評価しましょう。
執筆用の音声入力ソフトで見るべきポイント
ツールと価格を並べて比べたいなら、音声入力ソフトの比較にまとめてあります。本を書くなら、機能一覧表のほかのどの項目よりも重要な基準がいくつかあります。
- 間への寛容さ:長い沈黙でセッションが終わってはいけません。
- 原稿用のアプリで使えること:Word、Google Docs、Scrivener、あるいはプレーンテキストエディタで、コピー&ペーストなしに。
- 同期されるカスタム語彙:スマートフォンとパソコンの間で同期され、机で覚えさせた名前が散歩中にも通じること。
- 控えめな手の入れ方:フィラーは取り除き、句読点は加え、文はそのまま。
- モバイルでの記録:録音、スマートフォンのキーボード、またはその両方で。
- 分量に合った料金体系:長編小説はかなりの量を話すので、単語単位か、分単位か、定額かを確認しましょう。
料金について、当社の仕組みはこうです。Laxis の無料プランには月300分、つまり五時間分の発話が含まれ、音声入力と会議の文字起こしで共有します。Premium では上限が2,000分に上がり、Premium は支払いの前に14日間、カード登録なしで試せます。Laxis Voice Keyboard は、Mac、Windows、iPhone、Android で Word、Google Docs、Scrivener などあらゆる場所に入力でき、話しながらフィラーや繰り返しを取り除きます。処理はクラウドで行うため、オンライン環境が必要です。
多くの小説家が長年 Dragon で書いてきました。Dragon から移ってくるなら、Dragon のレビューで、何が変わったのか、作家たちが代わりにどのツールへ移っているのかを解説しています。
まとめ
タイピングで初稿を書くと、書きながら直したくなります。多くの原稿が第三章で止まってしまう理由の一つはそこにあります。音声入力は、その選択肢を静かに取り上げます。まだ話している途中の文は磨けないので、先へ進むしかなく、やがて本は直す価値があるだけの長さになります。声で書くことの本当の恩恵はそこにあるのかもしれません。速さではなく、一回目は粗くていい、しかもたっぷりの長さで粗くていい、という許可です。
よくある質問
音声入力で本を書くことはできますか?
はい。多くの作家が長編小説やノンフィクションの本を丸ごと声で下書きしています。原稿に直接話しかける人もいれば、散歩中に録音してあとで文字起こしする人もいます。うまくいくかどうかを決めるのは準備と推敲です。毎回のセッションの前に短いアウトラインか場面カードを用意し、話し言葉の文を書き言葉の文に変える二回目の推敲を別に行います。ページあたりの推敲は、タイピングした原稿より多くなると考えておきましょう。
小説を口述するいちばん良い方法は何ですか?
まずアウトラインを作り、その場面に誰がいて、何を望み、どう終わるかを書いた短いカードをもとに、一度に一場面ずつ口述します。話しながら直してはいけません。一晩置いてから声に出して推敲し、話し言葉の癖を削り、会話文の句読点を戻します。どの音声入力アプリを選ぶかより、ワークフローのほうが重要です。
会話文や句読点はどう口述しますか?
「open quote」や「new paragraph」といった句読点のコマンドを話すこともできますが、多くの作家は、会話文を話者タグ付きの素の台詞として口述し、推敲のときに引用符や動作の描写を加えるほうが速いと感じています。まず登場人物の名前をツールのカスタム辞書に登録し、フィラー除去が登場人物の意図的なためらいまで消していないか確認しましょう。
本を書くには、音声入力のほうがタイピングより速いですか?
音声入力のほうが速く言葉をページに載せられますが、本の執筆を制約するのは入力ではなく、考えることと推敲です。スタンフォード大学、ワシントン大学、Baidu の研究者による2016年の研究では、音声はスマートフォンでのタイピングよりおよそ3倍速いという結果でしたが、使われたのはあらかじめ用意された短いフレーズでした。オリジナルの文章では、どれだけ速くなるかは、話し始める前にその場面に何が必要かを分かっているかどうかにかかっています。
口述した原稿はどう推敲しますか?
推敲は別の回に、できれば翌日に行い、原稿を声に出して読むか紙で読みます。まず構成を確認し、それから準備運動の文、「で」や「基本的に」といった話し言葉の癖、繰り返される動詞を削ります。だらだら続く文を自然に息継ぎするところで切り、会話文の句読点を戻します。タイピングした原稿にも同じ推敲が必要で、口述した原稿は継ぎ目が目立ちやすいだけです。
歩きながら本を口述できますか?
はい。多くの作家がむしろそのほうを好んでいます。いちばん確実なのは、歩きながらスマートフォンで場面を録音し、あとでファイルを文字起こしする方法です。間を置いても何も失いませんし、テキストが現れるのを見ずに済むからです。短い時間なら、スマートフォンの音声キーボードでも対応できます。歩きながらのセッションはラフな下書きと考え、細かな推敲は机で行いましょう。